菊陽町のよしもと小児科です

お問い合わせ・ご相談はお気軽にどうぞ
Tel.096-233-2520
トップページ >  第209話 想定外

第209話 想定外

小児科医のつぶやき|第209話 想定外

 はじめに、先月の豪雨災害で被害に遭われた皆様に対しまして、改めて心よりお見舞い申し上げます。まさかここまで被害が酷いとは想像していなかっただけに、その後の様子を映像で見るたびにかなり酷かったのだなということがわかりました。特に自分が大好きな天草地区での被害は、もしかしたら満潮と重なったことが被害を大きくした要因ではないかとも言われていますが、想像以上に甚大な被害が出てしまい残念でなりません。何度も耳にしましたが、まさに「想定外」の雨量が被害を拡大させてしまったようです。これまでのような生活が戻ってくるのにはまだまだ時間がかかりそうですが、これからも自分なりに出来る限りの支援させていただきたいと思います。    


 想定外といえば、新型コロナの流行もそうだったように思います。最初は中国で得体の知れぬ病気が出てきたみたいだとのんきに構えていましたが、あっという間に世界中に拡散されて、最初の頃は多くの方がお亡くなりになりました。志村けんさんなどの著名人の方も犠牲になられて、これはまずいぞということになったのは記憶に新しいことです。ただ最近ではウイルスも弱毒化して新型コロナで重症化することは以前に比べたら少なくなってきましたが、ここにきてまた罹患者数が増加の一途を辿っているようです。これから寒くなってきた時に流行状況がどうなっていくのか、ちょっと気がかりなところです。


 そして最近の小児科はどうかといえば、どうも以前のように病気に季節感がなくなってきたように感じています。これもいわゆる「想定外」の出来事なのかも知れません。例えばこれまでは夏場に流行る手足口病やヘルパンギーナも最近では年中見かけるようになってきましたし、インフルエンザも冬場のみならず、1年中患者さんがいるような気がします。もしかしたら温暖化の影響が出ているのかも知れませんが、それだけではないようにも思います。更に最近ではマイコプラズマも結構流行していて、しかも抗生剤が効きにくくなってきています。実際、かなりの症例で薬が効かないために入院するお子さんが増えてしまい、夏場ですが紹介先の病院はベッドに空きがないこともあるようです。そしてご存じのように百日咳も依然として流行が収束しません。当院でも毎週数名のお子さんが陽性と判明して、治療を行っている状況です。これも小児科医からすれば「想定外」と言えると出来事です。そして現在3種混合ワクチンがなかなか手に入らないという困った事態に陥ってしまっています。残念ながら3種混合ワクチンの接種率はまだまだ低いようですので、これからも啓蒙活動が必要だと感じているところです。1日も早く定期化して欲しいのですが、もうしばらく時間はかかりそうです。  


 想定外のことに直面した時にいかに振る舞うかということで、その人の評価が決まるようにも思います。これまでがそうであったように、人間はこれからも未知なるウイルスとの戦いが続くことでしょう。あっては欲しくないですが「想定外」の出来事がこれから先もどんどん出てくるかも知れません。そうなった時に慌てないように我々は日頃から準備をしておくことが必要です。でもやっぱり今回の豪雨災害もそうであったように、想定外のことが起きてしまうとどうしていいのか慌ててしまいます。想定内の出来事で済むのであれば苦労はしませんが、なんとも大変な世の中になってきました。


 これから9月になれば喘息やR Sウイルス感染症のお子さんが増えてくるというのがこれまでの小児科の特徴でした。果たして今年はどんな9月になるのでしょうか。出来るだけ「想定外」のことが起きないように願うばかりです。  



【令和7年9月】
よしもと小児科 吉本寿美

<第210話 改めてワクチンについて考えてみる 208話 咳について考える>

ページトップへ戻る
Copyright (C) 2012 yoshimoto Pediatrist Clinic, All Right Reserved.