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第127話 16年目に向けて

小児科医のつぶやき|第127話 16年目に向けて

 この10月から当院は開業16年目に突入しました。改めて振り返ってみると、意外に早かったように感じます。当然、自分も年をとって白髪もかなり目立つようになってきまして15年の月日をしみじみと感じています。最近では患者さんとして診察していたお子さんが出産して、お母さんとしてお子さん連れで受診するケースもちらほら。これからはこういった光景も増えてくるのではないかと思います。嬉しい限りです。


 思えば、不要な薬(特に抗生剤)は出さないという方針の下に開業しました。当初はもちろん理解してもらえず、反発も強くてなぜ薬を出さないのかという意見も多くありました。そのため当院を受診されなくなった方も多いように思います。多くの方に受診していただくためには、要求されるように薬を出すのが簡単だったのかもしれません。ただ、自分はそれをしませんでした。必要以上になぜ抗生剤が不要なのかを説明してきました。そのため周辺の耳鼻科の先生からは、かなり不評をかったようです。「あそこは抗生剤を出さないからだめだ」みたいなことも言われているようです。ですが、ここにきてやっと国家を挙げて抗生剤の適正使用を推進するようになってきました。時間はかかりましたが、自分のやってきたことが間違いではなかったことが証明されたようで、ほっとしているところです。


 また、出来るだけきちんとした診断を行うように心がけてきました。例えば、おたふく風邪は耳下腺腫脹で受診されることが多いのですが、それでおたふく風邪とは診断出来ません。反復性耳下腺炎という、おたふく風邪と見た目には区別できない疾患もあります。そこで当院では疑わしき場合は、必ず抗体検査を行ってきました。それによって、見た目ではそうであっても違う場合もあるのだなということがわかりました。実際、腫れないまま罹患したというお子さんも多いようですので、おたふく風邪の罹患がはっきりしないお子さんは一度抗体検査をお勧めします。


 その他には、最近でも百日咳の患者さんが多いことにびっくりしています。ワクチン接種で予防出来る疾患ですが、ワクチン接種しても抗体が低下して罹患するお子さんを何人も経験しました。特に小学生高学年あたりから患者が増えてきますし、昨年は中学生の間でも流行してしまいました。これも、検査をしなければ通常は発熱もありませんので「かぜ」という診断で終わってしまいます。現在は鼻腔検査でかなり正確な診断が可能となりましたので、いかに疑いの目で診察を行うかということが、早期の診断に結びついていくのだろうと思います。    


 開業当初に比べたらワクチンの数も多くなったおかげで、重症のお子さんはかなり減少したように思います。救急病院の当番でも、以前ほど患者さんは多くないように感じています。もちろん当院を受診されるお子さんの数も以前に比べたら減少した印象があります。その代わりに、心の問題を抱えるお子さんや、発達障害と診断されるお子さんがかなり増えてきたように感じます。まだまだ、我々小児科医がやらなければいけないことはたくさんありそうです。ただ、自分だけ頑張っても限界がありますので、今後も周囲の先生と協力して保護者の皆様の理解を得られるように頑張っていきたいと思います。


 16年目もこれまでと変わらず、信念を持って診療を続けていきたいと思います。どうぞ、今後ともよろしくお願い致します。



【2018年 11 月】
よしもと小児科 吉本寿美

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