第114話 登園許可書って
最近、登園許可書というものを依頼されることが頻繁にあります。本来は必要のない病気まで依頼されることが多いのですが、それがないと登園できないということですので、お願いされたら一応は書くことにしていますが本当にそれって必要なのでしょうか?冷静に考えてみると、これだって立派な医療費増加の一旦を担っているように思ってしまうのですが、どう思われますか。文章料ということで、負担金をいただいているクリニックもあるようです。さすがにそこまではやりませんが、あまりにも不要なものまで書かされると時間とお金の無駄だよなとつい考えてしまいます。
そもそも許可書って、どのような意味があるのでしょうか。果たしてウイルス感染症に対して、ここからは絶対に感染しませんよという区別がつくのかは疑問に思います。ある程度全身状態がいいのであれば、登園は構わないのではないかと判断して許可書は記入しています。さすがに麻疹、水痘、おたふくなどはきちんと基準を守る必要がありますので、当院でも厳格に対応しています。それでも、手足口病やヘルパンギーナなどのウイルス感染症だと、本来許可書は必要ではないはずです。何故かというと、ウイルス自体の排泄は1ヶ月程度続くと言われていますので、1週間休んでもその後感染しないという保証はないのです。
ところが、先日当院の許可書発行が早すぎるというお叱りを受けました。それだから自分の子どもの園で病気が流行するから、もう少し考えて欲しいとのことでした。その保護者さんのお気持ちもわからないでもありませんが、ウイルス感染症は小さい時にある程度経験するのは仕方ないことなのです。早かれ遅かれ、どこかで必ず感染を経験するものです。それが嫌なのであれば、保育園などの集団生活は難しいのではないでしょうか。いろいろな病気をもらってくるのは、集団生活を送る時には避けて通れないことだと思います。いろんな病気をもらって、だんだん子どもは強くなっていくものだと思います。まあ、命に関わるような病気をもらうのはいけませんが。
困ったことに、園によって登園許可書の基準がバラバラです。あそこは許可書はいらないけど、ここの園は必要というのはよくあります。その辺りは何とか全国で統一してもらえないのでしょうか。よくある突発性発疹はウイルス感染症ですので、全身状態がよければ発疹があっても登園可能ですが、間違った基準を提示されている園もあるようです。本来は許可書が不要な疾患なのですが、許可書がないと行けないということで忙しい保護者の方が受診されるケースは珍しくありません。何でもかんでも許可書が必要だというのは、どうなのだろうと思います。
また許可書を出して、その後問題が起きた場合の責任というのはどうなるのかというのも考えてしまいます。恐らく許可をした当院に責任が及ぶことになるのかなと思いますが、そのような責任ある文章を簡単に書いていいものかどうか、最近疑問に感じるようになりました。たかが許可書といえども、我々小児科医の責任は重いものだと思っています。あえて必要のない許可書を書かなくてはならないのは、小児科医にとっても保護者の方にとっても、お互い不幸なことのように思えてなりません。もしこの文章を見られた園関係の方がいらっしゃれば、ぜひ検討していただきたいと思います。そうすればもっと受診回数を減らせますし、ひいては医療費削減にも貢献するものと思いますので。どうかよろしくお願いいたします。
【2017年 10 月】
よしもと小児科 吉本寿美