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第132話 変わりゆく感染症

小児科医のつぶやき|第132話 変わりゆく感染症

 暖かくなってきたような感じもしますが、まだ朝夕は肌寒い日が続いています。春本番が待ち遠しいですね。この冬は例年に比べてあまり寒さも厳しくなかったように思います。そのためか、インフルエンザの流行も急激に流行が始まり、あっという間に終息したように感じました。しかも、いつもなら流行するB型が全くと言っていいほど流行しませんでした。原因ははっきりしませんが、B型については前年に流行したためにある程度抗体が残っている人が多かったというのも可能性としてはあるかもしれません。あるいはいわゆる暖冬が原因だったのかもしれません。    


 そして今年の冬は、手足口病やヘルパンギーナといったいわゆる「夏風邪」といわれる病気のお子さんも例年以上に多かったように思います。これも暖冬が原因だったのでしょうか。ウイルス感染症ですからいつ患者さんがいてもおかしくはないのでしょうけど、夏の病気は夏に流行って欲しいものです。以前はほとんど冬には診ることがなかったので、やや違和感がありました。また、春先に流行る胃腸炎についても、近年は年中患者さんが受診されるように思います。ロタ、ノロと胃腸炎の原因ウイルスは違うと思われますが、春先だけではなくなってきましたので今後は年中注意を払う必要があるようです。    


 溶連菌についても、以前は夏の暑い時期に患者さんが多かった印象がありますが、近年は1年を通して患者さんが発生しているように感じます。これは、検査キットの普及できちんと診断出来るようになったということが大きいと思われます。冬にはあまり流行しないという概念は完全に捨てなければなりません。最近では冬場に咽頭痛を訴える場合、インフルエンザではなく溶連菌だったというのはよく経験するようになりました。


 我々小児科医は、季節ごとに「この病気が流行する」というのがある程度わかっていますので、以前は予測することも可能で診断は比較的容易であったように思います。ところが最近は本当に季節感がなくなってきました。原因は暖冬に起因するところがあるかもしれませんが、それだけではないようにも思います。検査キットの普及、海外からの旅行者の増加、もしかしたらワクチンの普及なども理由の1つなのかもしれません。そう考えると、今後は夏にもインフルエンザが流行るということが起こってくるかもしれません。実際、沖縄ではインフルエンザは夏に流行します。沖縄独特の気象状況によるものなのでしょうが、夏に沖縄から帰ってきて発熱した場合にはいつも頭を悩ませます。ただ、冬のように重症化することはあまりありませんので、いままでも見逃してきたのかもしれません。まずもって、これまでは夏にインフルエンザの検査はしませんでしたので。でも、これからはそう言っておられない時代がくるのかしれません。年中、いろんな病気のことを考えておかなくてはいけない時代になってきたのかもしれません。小児科医は「季節労働者」と揶揄されていた時代も終わりを告げることになるのでしょうか。        


 少子化で小児科を受診する患者さんは今後減少の一途をたどるのが予想されていますが、我々小児科医は患者さんが少なくなっても逆に悩みが増えてくるような気がしています。なんとなくほっとする時期がなくなりつつあるように感じています。これからは、このような状況にも柔軟に対応していかなくてはいけないのでしょうね。  



【2019年 4月】
よしもと小児科 吉本寿美

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