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第88話 子どもの貧困について

小児科医のつぶやき|第88話 子どもの貧困について

 先日、衝撃的な報道を目にしました。なんと、日本の貧困率が2012年に16%と過去最高になったとのことです。まさか、この日本で貧困なんかあるのかなと思いましたが、現実はかなり厳しいみたいです。何をもって貧困というかは難しいところではありますが、簡単に言えば2012年だと年間収入が4人世帯で244万円以下を貧困というそうです。これが1997年だと297万だったそうですから、最低ラインが下がってきていますね。


 お金が全てではないのは明白なことで、お金持ちが幸せかといえばそうともいえません。お金がなくても幸せに暮らしていらっしゃる方は山ほどいらっしゃいます。ですが、お金がないと最低限必要なものさえも買うことが出来ません。報道によれば、食事をきちんとしていない子ども達が増えてきたそうです。朝食はバナナ1本だけとか、ヨーグルトのみとか。朝はお腹いっぱい食べて、夕食を軽めにするというのが理想なのですが、どうも日本では逆のようです。この食べ方だと、子供たちは肥満傾向になってしまいます。社会事情も変わってきて、共働きのご家庭も増えてきましたので、昔みたいにのんびりゆっくり家族一緒に食事という訳にはいかなくなってきたのは十分理解できます。ですが、そこは何とかやり繰りして食事だけはきちんと食べて欲しいと願うところです。


 また、貧困率が子ども達のワクチンの接種率にも少なからず影響しているようです。当院はワクチンについては、任意接種もみなさんに推奨していますし、確認して接種されてない場合には何度も話をしています。うるさいと思われるかもしれませんが、ワクチンを接種してなくて罹患されてしまったお子さんや成人で罹患された方を多く診察してきましたので、そのようなことを繰り返してはいけないという思いからなのです。ですが、有料となるとちょっと考えておきますという保護者の方は未だに少なからずいらっしゃるのも事実です。逆に子どものためならお金は惜しまないので何でも接種しますという保護者の方も多くいらっしゃいます。なかなかお金が絡んでくると、それ以上強く言えません。


 また、医療費の窓口支払い無料化についても、貧困対策として考えられることではありますが、そうすればコンビニ受診になるので医療費抑制にならないという意見もあります。そうならないようにするには、受診したらすぐ薬をだすというのではなくて、薬が必要ではない場合もあるし、こんな時は急いで受診する必要はないですよときちんと説明してあげることも必要なのではないでしょうか。そうすれば、コンビニ受診は無くなっていくように思います。どうも昔から患者集めのために薬を出すというのが日本の悪いところではなかったのかなと思っています。まあ、欲しい保護者の方は当院を受診されないのでしょうけど。


 格差が拡がってきていると言われる日本ですが、なかなか困難を表に出せないというのもあるでしょう。受診が困難を抱えた家庭の発見場所になることもあるかもしれません。日本とは縁がないと思っていた貧困という2文字を見て、驚きと悲しみでいっぱいです。改めて病気をただ診るだけではいけない、その背景にある家族環境なども知っておく必要があるのだと思いました。重症感染症はかなり減少してきましたが、小児科医にはまだまだやるべきことは山積しているようです。



【2015年8月】
よしもと小児科 吉本寿美

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