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第79話 どこへ向かっていくのか

小児科医のつぶやき|第79話 どこへ向かっていくのか

 当院も12年目に突入しました。振り返れば早いものですが、開業当時と比べるといろんなものが変わってきました。一番変わった事といえば、やはり予防接種ではないでしょうか。Hibや肺炎球菌ワクチン接種が開始され、現在では定期化されました。任意の頃には、この病気はこんな病気だから接種しましょうと説明するのが大変でしたが、今ではほとんどのお子さんが、普通に2ヶ月から接種を受けられますし、同時接種も当たり前のようになっています。この10月からは水痘も定期化され、今後は水痘の患者さんを診る事も少なくなってくることでしょう。


 その他では、開業当初に比べたら明らかに重症感染症のお子さんが減少し、それに伴って抗生剤の処方が減少しました。開業した頃は、自信がなかったのかも知れませんがいろんな病気に対して抗生剤を出していました。ですが、経験を積んでくるとほとんどの病気で抗生剤が必要ないというのがわかってきました。必要なのは溶連菌、耳漏のある中耳炎、重症な細菌感染症くらいでしょうか。「かぜ」と診断されて抗生剤を内服されているお子さんが時々受診されていますが、それはおかしいですよね。「かぜ」はウイルス感染症ですから効くはずがありません。このことについては医者の方にも問題があります。薬を出して人気取りをするのではなく、きちんとした診断と治療をする必要がありますが、どうしても忙しくなると説明が面倒になり「はい、では薬出しておきますね」となる訳です。


 個人的には、以前に比べると格段に病気をしなくなりました。強くなってきたのか、慣れてきたのか定かではありませんが、頻繁に罹っていた胃腸炎にはならなくなりました。明らかに体の衰えを感じてはいますが、以前よりは元気になってきたようにも感じています。早起きは歳のせいなのか、かなり得意になってきました。でも、夜はなかなか遅くまでは起きていることが出来なくなってきました。聞いてはいましたが、ほんとそうなるものなのですね。体は正直です。


 この10年あまり、自分なりに突っ走ってきました。最近は体格同様、性格も丸くなったようにも思います(と自分で思っているだけですが)。さすがに自分より年上のお母さんは少なくなってきましたので、訴えも落ち着いてゆっくり聞く事ができるようになったかなと思います。開業医としていつも悩むのは、医者でもあり経営者でもあるということです。経営の事だけを考えれば、たくさん薬を出して患者数を増やしたほうがいいに決まっています。ですが、自分は「小児科医」ですので、子どもを診ることについてはスペシャリストでなくてはなりませんし、プライドを持って診療行わなくてはなりません。


 これから10年、どこへ向かって進んで行くことになるのでしょうか。恐らく今後も幾つかのワクチンの定期化が行われるはずですので、病気自体は減少の一途をたどると思われます。ですので、今まで以上に薬に頼らない医療の実践を今後も押し進めていくつもりです。時間はかかりますが、抗生剤は不要であるという患者教育も今まで以上に頑張らなくてはいけないと思います。その一方で、アレルギー、成人病予備軍、心の問題を抱えるお子さんなどが増えてきました。今後も増加するのは間違いないでしょうから、このような事例についてもしっかり対応していかなくてはと思っています。


 薬に頼らない小児科医として、保護者の方への教育も行いつつ受診されたお子さん一人一人に真摯に向かい合い、正しい小児医療の実践を目指してこれからも日々の診療をおこなっていきたいと考えております。



【2014年11月】
よしもと小児科 吉本寿美

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