第193話 日常が戻ってきました
好天に恵まれることが少なかった4月も終わり、いよいよ暑い熊本の夏の季節がやってきそうです。なかなか爽やかな春を楽しめる日が今年はいつも以上に少なかったように感じましたが、みなさまはどうだったでしょうか。
4月に入ってから、当院では急に受診されるお子さんが減少しました。これはいいことなのですが、改めてそれまでの経験したことのないような忙しさは一体なんだったのだろうと思ってしまいました。発熱外来が終わったのは全く関係ないと思いますが、多くのお子さんが一通り色々な感染症に罹患した結果ではないかと思います。やはりコロナ禍の3年間は感染症が全く流行しなかった反動というのが大きかったのではないでしょうか。もうあのような忙しさは2度と経験したくはありません。診察する方もされる方もギスギスした感じしかありませんでしたので、心から診療を楽しめる時間を過ごすことは出来ませんでした。最近は待ち時間も短くなって、診察に来られる方も心のゆとりがあるように感じます。
最近地場のワクチンメーカーKMBのCMを目にすることが時々あるのですが、「普通の日ってどんな日だったっけ?」という言葉がすごく耳に残ります。確かにここ最近は何が普通だったのか、みんな忘れてしまっているように思います。これまで普通じゃないことが今や当たり前のようになってしまいました。例えばコロナ禍においてはマスクを付けているのは当然のことでした。小さい子どもたちでさえ、嫌がることもなくマスクを付けている姿は自分には異様な光景に映りました。そしてマスクをしていないのは悪者扱いをされてしまうというのも当たり前でした。ただ最近はマスクをしていなくても別にどうも思われないようになってきました。また以前はどこにでもアルコールが設置されており、手指消毒をするのが当然のこととなっていましたが、最近は必死にアルコール消毒をする姿は見なくなったように思います。
但しクリニックでは今でもマスクは必須ですし、アルコール消毒をされる方も多いのが実情です。個人的には果たしてマスクがどこまで必要なのか、疑問に感じることも少なくはありません。冬場とか、インフルエンザが流行する時期とかに限定されているのであれば別にどうも思いませんが、これからも年中マスク装着が義務化されるのはどうなのでしょうか。子どもたちにはマスクをはめた我々の顔というのはどう写っているのか、いつも気になっています。表情のない世界で育つのは、子どもたちにとっては好ましいことではないと思います。
とは言いながらも、少しずつ日常が戻ってきたのは間違いありません。色々なイベントも再開されるようになり、世の中も明るさを取り戻したように感じます。あとは病気の流行がコロナ禍前の状況に戻ってくれたらいいなと思っていますが、果たしてどうなるのでしょうか。最近は季節感がなくなってきていますので小児科医泣かせではありますが、そのうち以前のような流行状況が戻ってくるでしょう。
報道によると宮崎県ではここに来て百日咳が流行しているようですが、コロナ前には当院でも結構患者さんがいらっしゃいました。インフルエンザさえも全く流行が見られなかった反動で、今シーズンは久しぶりにB型まで流行してしまいました。ただ子どもたちは風邪も含めて一通り感染症に罹患した人が多くなってきましたので、これからはコロナ前のような日常が戻ってくると期待しています。そしてそれが日常になって欲しいと願っています。
【令和6年5月】
よしもと小児科 吉本寿美