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第94話 後医は名医

小児科医のつぶやき|第94話 後医は名医

 暖冬だった今年も、例年のように寒さが身にしみる季節がやってきました。それに伴って、遅くなりましたがインフルエンザの流行が始まってきたようです。検査キットや治療薬がない時代には、どうやって診断や治療をしていたのだろうと思うことがあります。今では的確に診断や治療が出来るので、本当にありがたい時代ですね。


 そこで、この時期になると仕方ないことではありますが、「検査をしてほしい」とか「園から検査をしてくるように言われた」といって受診されるケースが増えてきます。ご存知のように、インフルエンザの検査は一般的には発熱して半日程度経過したあとに検査を行います。発症早期のウイルス増殖が少ない時期だと、検査しても陰性に出ることがあるからです。もちろん例外もあるのですが、発熱したら何でも検査をすればいいというものではありません。また、RSウイルス感染症という病気の検査については、我々開業医クリニックだと保険請求が出来ません。いわゆるサービスで検査をしている訳で、検査をすれば病院は損をするという仕組みになります。ではなぜ検査をするかといえば、不要な抗生剤を出したくないためなのです。必要と思えば検査を行いますが、何でも検査してきなさいというのはどうか控えて欲しいものです。検査するかどうかの判断はこちらに任せてもらえたらありがたいのですが、園から言われた保護者の方も板挟みになりますから悩ましいところではあります。


 またこの時期になると、どうしてもクリニックを転々とする患者さんが増えてきます。熱が下がらない、検査で異常なしと言われたけど症状が改善しないというのが主な理由のようです。そのようにして受診をされると、こちらとしては非常に診断は楽になってきます。これとこれは違うから、あとはこれを検査すればいいのかなということになります。あるいは前医ではなかった症状が出ていたら、ああこの病気だなと診断出来ることもよくあります。これがいわゆる「後医は名医」ということなのです。そうなれば、前医の評価は下がり後医の評価は上がることになります。


 例えば、小児科では時々遭遇する「川崎病」という疾患ですが、この病気は発熱、発疹、口唇発赤、眼球充血など幾つかの症状が揃うと簡単に診断出来ます。ですが、最初は発熱だけのこともあり、そこで診断することはかなり難しいものです。数日熱が続いてなかなか治らないから別の病院を受診すると、症状が揃ってきているから川崎病と診断が出来るというのはよくあります。でも、あとから診察した病院の先生が素晴らしいのではなく、症状が揃えば最初の病院に行っても同じ診断が出来た可能性は十分あります。


 あと、先月実際に経験した「アレルギー性紫斑病」という病気のお子さんですが、腹痛が続き救急病院を受診し検査をいろいろするけどわからないということで、その後当院を受診されました。その時には既に下肢に紫斑が多く出現していたため、簡単に腹痛の原因はアレルギー性紫斑病という診断が出来ました。恐らく最初に当院を受診されてもわからなかったのではと思います。腹痛の際には紫斑病を鑑別に挙げないといけないのですが、最初からきちんと診断するのは難しいもので、実際に見逃した経験もあります。


 最初からきちんとした診断が出来たらいいに越したことはないのですが、そこがなかなか難しいのがこの世界です。インフルエンザにしても、その日は出なかったけど翌日したら陽性に出たというのは頻繁にあることです。そこで同じクリニックを受診されていたのならばいいのですが、違うクリニックを受診されていたら後の先生が名医ということになりかねません。症状が良くならないからといって、幾つもの病院を受診するのは出来れば避けていただきたいものです。粘り強く同じ先生に診てもらえば、きっときちんとした診断や治療に繋がるはずですので。未熟な小児科医からの切なるお願いです。



【2016年 2 月】
よしもと小児科 吉本寿美

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