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第60話 人の振り見て何とやら

小児科医のつぶやき|第60話 人の振り見て何とやら

開業していると、どうしても独りよがりな診療姿勢や処方になりがちです。幸い、隣で妻が診察していることもあり、お陰で少しはまともな診療が出来ているのではと思いますが、それでもまだまだなのかも知れません。自分の診察する姿を自分でみたらどう見えるのか、興味が湧きます。実際にこうやって反省しようという学会のセクションもあるのですよ。


ところで、日頃から他のいろいろな先生の処方箋を目にする機会があります。それを見たら、ある程度その先生の力量がわかるようになってきました。素晴らしいと思う処方もある一方で、改めて思うのがなんとまあ抗生剤を出す先生の多い事か。出すのが悪いと言っている訳ではありませんので、そこは誤解されないように。先日の感染症の講演会でも、はっきりと咽頭炎で抗生剤が必要なのは溶連菌のみであると、高名な先生が話されていました。喉が赤いからといって抗生剤を飲む必要はないのです。保護者のかたに「この処方は何と言ってもらわれましたか?」と聞くと、「風邪と言ってもらいました」ということで出されている薬が抗生剤やら気管支拡張剤やらというケースは今でも多く、残念でなりません。


日本は昔からの風潮として、抗生剤を簡単に処方する傾向がありました。医者の側にも責任は多いにありますし、患者側にも問題はあります。最近は、医者の間では処方する薬が少ない先生が腕のいい先生であるという評価が多くなって来ているのも事実です。ただ、これは患者側からすればそうでもないようです。病院に行ったら薬くらいはもらって帰らなければという思いが、特に年配の方には多いようです。なので、手ぶらでお帰り頂くのは説明するのも納得してもらうのもなかなか難しいものです。


一方、先日遠くから当院を初めて受診された方がいらっしゃいました。何でも、今までの病院はどこもすぐ抗生剤を出されるし、果たしてこれでいいのかという疑問を持ち、ネットで検索して当院を受診されたということでした(でも、どんな検索ワードで検索されたのでしょうか?ちょっと興味がありますね)。熱がありましたが、解熱剤のみの処方で翌日は改善傾向にあり、抗生剤なんか不要であるという事がわかってもらえたようで、お母さんもほっとされたようでした。この流れが主流になってくれれば嬉しいのですが、まだまだでしょうか。


僕の処方も当然他の先生に見られている訳ですから、「なんだ、この処方は?」と思われているかもしれませんが、どこにだしても恥ずかしくない処方を心がけているつもりです。少なくとも抗生剤処方にあたっては、なぜ抗生剤が必要なのかを説明して処方するようにしています。中耳炎になぜ抗生剤が不要なのかというのも時間をかけて説明していますが、ここは耳鼻科の先生からすれば「けしからん」となるところかも知れません。でも、実際抗生剤なしで治っているのは事実なので、自分としては中耳炎に全例抗生剤が必要という訳ではないというのは譲れないところです。


常に自己反省を行い、「人の振り見て我が降り直せ」の精神を忘れないように今後も診療を行っていきたいと思います。他の人の良い所はどんどん吸収し、自分の確固たる信念は曲げずに必要最低限の処方で病気に立ち向かって行きたいと思います。これが当たり前になる日が来る事を願って止みません。


【2013年4月】
よしもと小児科 吉本寿美

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