第200話 今年を振り返って
今年はいつになったら冬は来るのだろうかというくらい夏のような気候が続きましたが、さすがに最近は寒くなっていつも通りの年末のような気候になってきました。11月になっても手足口病やヘルパンギーナといった「夏風邪」といわれる病気が流行することはこれまであまり経験がなく、やはり温暖化の影響が出ているかもしれません。そんな1年もいよいよ今月で終わりますので、例年のように今年1年を振り返ってみたいと思います。
今年は昨年からインフルエンザが流行っていたおかげで、年明けてから爆発的に流行したという印象はありませんでした。ただ例年と違ってインフルエンザB型が久しぶりに流行しました。A型と違って、治療薬に対する反応がやや悪いとか、嘔吐や下痢といった胃腸症状が出るというのが特徴的です。今年はA型に罹ってB型にも罹ったという方が少なくはなかったようです。中にはコロナにも罹って、「ABCコンプリートです」と言ったお子さんもいらっしゃいました。笑ってはいけませんが、それくらいいろいろな感染症が流行しました。
現在は8年ぶりにマイコプラズマが大流行しています。昔は何故かオリンピックが開催される年に流行すると言われていましたが、しばらく流行はしていなかったようです。久しぶりに流行しているおかげで検査キットの不足状態が続いており、なかなか診断もままならないという状況が続いています。また検査では陰性でもレントゲン撮ると明らかにマイコプラズマを思わせる陰影を認めるお子さんや、発熱が続かないお子さんも増えてきて、診断の難しさを感じています。マイコプラズマについては、あとしばらくは注意が必要のだと思われます。
そして今年も出ました、ワクチン問題。今年はもうないだろうと思っていてもなぜか毎年現場が混乱するこの問題は、一体いつまで続くのでしょうか。国が主導してやっていかなければこれからも無くなることはないと思いますが、一体どうなっているのでしょうか。いまだにMRワクチンは供給が不安定ですし、供給されても使用期限が迫っているワクチンしか届かないし、現場は混乱しています。日本のワクチン行政は本当にお粗末なもので、結局困るのは接種が必要な子どもたちなのです。
そんな中、今年4月から菊陽町はおたふくかぜワクチンに助成を出してくださるようになりました。以前から当院での接種率は高かったので、これによって接種率がもの凄く上がったという印象はありませんが、負担が減って喜ばれる方が増えたのは間違いないようです。ただ菊陽町だけが頑張っても感染予防には限界があります。これが他の地域にも波及していけばいいのにと思いますが、財政問題も絡んでくるのでどうなのでしょうか。本来はMMRワクチンが早く定期接種になってくれたら何の問題もないのですが、いつまでこの状態が続くのでしょうか。何だか先進国なのに情けないですね。
受診された方が当院の処方内容を見ると、種類が少なくてびっくりされる方も多いかもしれませんが、小児科の処方も時代と共に少しずつ変わってきました。必要最低限必要な薬はもちろん出しますが、お腹いっぱいになるような不必要な処方はしません。それでも良くなって元気になっているお子さんがほとんどですので、これからも不要な処方はおこなわないというのを心がけていきたいと思います。
個人的は今年還暦を迎えたものの、さほど大きな変化もなく1年が終わろうとしています。来年こそはどうかいい年でありますようにと願いつつ年末を迎えたいと思います。少し早いですが、みなさまよいお年をお迎えください。
【令和6年12月】
よしもと小児科 吉本寿美