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第72話 今さらですが…。B型肝炎ワクチンを考える

小児科医のつぶやき| 第72話 今さらですが…。B型肝炎ワクチンを考える

 やっと暖かくなって、入学式のシーズンとなりました。何度見ても小学1年生のランドセル姿は可愛いものです。遥か昔、自分もそうだったのでしょうが、当時の事はほとんど記憶にありません。中部小も木造校舎で、プールも歩いて行っていた時代です。講堂(体育館とは言ってなかった)の横には音楽室があって、その横の木の下では夏になれば蝉の幼虫掘りが行われていました。


 その講堂では毎年集団で予防接種が行われていました。何のワクチンだったのかはわかりませんが、ガラスの注射器がたくさん準備され、数名のお医者さんがいらっしゃって、「あの先生、痛くないバイ」と言っていたような記憶があります。今は集団接種をする自治体もかなり減少し、ワクチンの種類も増えて日本も少しずつですが諸外国に追いついてきたようにも思います。


 ところが、残念ながら日本ではまだ任意の予防接種がいくつかあるのも事実です。幸い水痘ワクチンは10月から定期接種になる予定で、2回接種することが出来そうです(但し、年齢制限があるようですが)。取り残されたのがおたふくかぜとB型肝炎ワクチンです。おたふく風邪については、副反応の問題があるため定期化にはもうしばらく時間がかかるようです。僕が大学時代に治験を担当したMMRワクチンの早期の復活を願っております。


 B型肝炎については、WHO加盟国の90%以上で接種が行われているにもかかわらず、日本は未だに任意接種です。定期化見送りの理由は「盛り上がりに欠けているから」とのこと。他にも理由があるのでしょうが、何ともよくわからない理屈です。日本でのB型肝炎感染者は130万~150万人と推定され、そのうちの10~15%が難治性(慢性肝炎、肝硬変、肝癌)だそうです。特に小児では3歳未満の子どもは持続感染になりやすいようです。感染経路としては母子感染が最も有名ですが、その他にも父子感染や唾液や汗なども感染源になるようです。保育園でキャリアのお子さんが噛み付いて集団発生したという事例もあるくらい、いろんな経路で感染を起こします。ですが、このような事はあまり知られておらず我々も情報を発信して、定期化に向けて「盛り上げて」いく必要があると思います。


 日本でもワクチン助成を行っている自治体が全国で18市町村程度あるようです。菊陽町には幾度となく働きかけましたが、いい返事は頂けませんでした。となれば、自費ですが自分らで子どもたちの命を守っていかなければなりません。幸い、当院でも接種率は以前に比べたら格段に上昇しています。それでも全体の2割程度でしょうか。もっと増えていかなければこの病気は無くなっていきません。自分は大丈夫と思わずに、積極的に接種をすることが将来の子どものためだと思うのが当たり前になってくるようになればいいですね。それが、定期化を促進する一番の早道のようにも思えます。



【2014年4月】
よしもと小児科 吉本寿美

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