菊陽町のよしもと小児科です

お問い合わせ・ご相談はお気軽にどうぞ
Tel.096-233-2520
トップページ >  第98話 一歩ずつ前へ

第98話 一歩ずつ前へ

小児科医のつぶやき|第98話 一歩ずつ前へ

 熊本地震から1ヶ月半が過ぎました。依然として余震が続き、ライフラインは少しずつ復旧してきましたが、報道は少しずつ減ってきました。依然として震災直後と変わっていないような場所も多数あり、まだまだ手つかずのところも多く、熊本はこれからが本当の意味での復興になるかと思います。


 当院は被災地に近いこともあり、南阿蘇や西原村のお子さんが多く受診されていました。現在は道路事情が悪く、以前のように簡単に受診することが出来なくなってしまいました。それでも遠回りして受診された保護者の方に話を聞くと、「自宅がなくなりました」とか「2階に寝ていたら、1階が潰れてしまいました」など、生々しい現実を聞かされました。何人もの保護者の方から聞きましたので、改めて今回の地震がものすごい力を持っていたのだなと思い知らされました。「生きていたから良かったです」という言葉を何度も耳にしました。さすがに何も答えることが出来ませんでした。


 現在小児科の外来は、暖かくなってきましたので流行する感染症は減っています。ところが、やはりというかちょっと気になる症状を訴えるお子さんも出てきました。突然夜中に嘔吐する、母親から少しの時間も離れられない、頻繁に頭痛や腹痛を訴える、などです。これらのお子さんに共通して言えることは、普段は変わりなく元気なのですが、夜になるとどうしてもこのような症状が出てしまうということです。診察しても、どこも悪いところはありませんので、やはり地震の影響によるこころの病だと思われます。では、どうすればいいのでしょうか。治療としては、はやりきちんと話を聞いてあげることが大切です。大人でもあの揺れを2度も経験したら恐怖でしかありませんので、子どもだとなおさらではないでしょうか。そして、大丈夫だときちんと話してあげることです。そばにいるから大丈夫だと言ってあげましょう。


 また小さいお子さんだと、携帯のアラームの音を真似て「地震ゲーム」とか言って遊ぶということもあるようです。何度もあのアラームが鳴れば、子どもは覚えますようね。それでもどうか叱らないようにしてあげてください。悪気があってやっているわけではなく、単に真似をしているだけなのですから。また、少し大きくなった子どもになると、「自分がこんなことをしたから、こんなことが起きたのではないだうか」とか、「自分にはもっと何かやれることがあったのではないだろうか」と思ってしまうケースもあるようです。その気持ちはわからないでもないですが、症状が進めばこのようなケースは治療が必要になってきますので、ご注意ください。


 今熊本は復興に向けて少しずつ進んでいっています。残念ながら熊本城はあのような姿になってしまいましたが、「俺も頑張っているから、県民も頑張らなんよ」というのを見せてくれているようにも思います。スポーツ界も甚大な被害を受け、ロアッソは未だホームの試合が熊本で開催出来ません。バスケットのヴォルターズはチームの存続の危機です。高校野球も大会が全て中止になり、高校3年の息子は夏の大会を残すのみとなりましたが、藤崎台球場が使えるかどうかもわかりません。まさか、こんなところまで被害が及ぶとは予想しませんでした。


 しかし、熊本の人は強いなと今回改めて感じました。みんなで支えあって黙々と頑張っています。熊本弁で「できたしこ」というのがあります。「多くを望まないで、自分がやれる範囲で出来ただけ」という意味です。これから復興は長丁場になると思います。みんながやれることを「できたしこ」やって、時間はかかりますがみんなで熊本を元気にしたいと思っています。僕に出来ることは限られていますが、未来の熊本を支える子ども達の心身のケアに対応するということで、少しですが復興のお手伝いが出来ればと思います。

できたしこ、がまだすばい熊本


【2016年 6 月】
よしもと小児科 吉本寿美

<第99話 震災後の受診状況について第97話 がんばるばい熊本 >

ページトップへ戻る
Copyright (C) 2012 yoshimoto Pediatrist Clinic, All Right Reserved.